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設立趣意書

1 趣旨

 世界には様々な地域があり、それらは固有かつ多様である。さらに長い歴史のなかでそれらは相互に作用し合ってきた。相互作用は地域共同体の伝統を尊重し、共生的、平和的でなければならない。しかし、環境破壊も粗野な暴力も世界で続いている。というより、どちらも急速に拡大しつつある。

 私どもは、環境及び他地域に、平和的、共生的に接することを訴えたい。世界に目を開いて大きな問題を見据え、そして地域多様性の保全こそその解決への道であることを実践で訴えたい。先人の偉大な教えを、自然との素晴らしい調和を、理不尽さに立ち向かう不屈の闘志を、つつましさに安んじて心ひろやかな生活を、実践してきた人々に交わって、何ができるか見つけ出し、一緒にやってみたい。

 現今の最も痛切な問題が環境破壊と戦争であることは疑いも無い。必要以上の欲望を煽るゆきすぎた産業社会は自然を乱開発し、資源と領土を支配しようとする大国の覇権主義は戦争を必然化している。経済功利主義一本槍の考えと、武力征服一本槍の姿勢が、環境破壊と戦争を生んでいる。この二つの問題は別物ではない。戦争は強烈な環境破壊を行なうし、また利潤を優先する論理は環境破壊を顧みない。両者の根底に共通するのは覇権主義である。自然に対する覇権主義と他地域に対する覇権主義である。

 私どもは、このような非道理に挑戦したい。環境に対する覇権主義の非道理をフィールドワークであばき、欲に目が眩んだ武力行使に対して平和と正義を求める声に連帯したい。貧しさ、弱さを競争の敗者と見る功利主義を否定し、謙譲と和の心で自然の恵みに安んじているものとエールを送り、支援することこそ、環境と平和を保全する基礎である。そして、環境と平和の保全は圧倒的大多数の人々の願いである。

 この願いを明瞭な、大きな声にすることは、個々人や個々のグループが孤立して行いうることではない。継続的な安定した法人を組織することが必須である。環境平和と国際平和に働きかける船団として、もやい合って進む「特定非営利活動法人平和環境もやいネット」を発足させたい所以である。

2 申請に至るまでの経過

 アジア・アフリカの地域研究の中で、地域の固有性と多様性を損ない、相互の共生を破る外力の侵入の例を多数見てきた。他方その状況に危機感をもち、これまでの研究と異なる、より実践的な働きかけを行いたいと考えるグループもおのずと生まれてきた。そのグループの共通点は、自然の生態環境、地域社会の伝統、そしてフィールド・ワークを重視することである。考えと志を同じくする人々は、これまでの地域研究の中で地域に培われ、身近の学生、住民のなかにも現れている。そうしたグループが互いに啓発、協力し合って、全体としてひとつの船団を作り、特徴のある、魅力的な実践と発信を行える段階に来ている。この法人が行う事業は、そうした既にある実践拠点を強め、住民に直接働きかけ、国際的な発信の輪を広げようとするものである。

〔1〕 環境修復・保全と平和巡礼プロジェクトの企画・支援事業

(1) 熱帯林と開発地の修復・保全事業は、破壊的開発の進行している熱帯林で、劣化地修復と森林保全を住民主体の視点で行おうとするものである。なかでも劣化と乱開発の著しいインドネシアの移民入植地は、これまで現地地方政府及び研究機関、入植移民と論議し、セミナーや公開討論会も行ってきた。そこでの事業を当面の主な課題とする。

(2) 平和巡礼事業は、紛争・戦争で生じた環境の修復と被災者の救援に当たる現地諸機関、現地住民の努力を報告し、支援する。これまで、ベトナムの枯葉剤被害者救援基金から、代表者を国際セミナーに招待し、被害と救援活動の状況を把握してきた。当面はその被害実態の報告や分析ソフト面での支援を行う。

〔2〕 地域つくり・人つくりプロジェクトの企画・支援事業

(1) 村おこし運動支援事業は、非木材森林産物、アグロ・フォレストリー、伝統家内工業などの活性化、1村1品運動などで村おこし運動を支援するものである。この法人の社員が大学や森林局の研究者、民間人との連携に深くかかわってきたラオスでの事業を当面の主な課題とする。

(2) 生態文化博物村運動支援事業は、伝統的生業と集落デザインを一体として保全する活動を支援する。雲南大学、四川大学を中心に、同グループは東南アジア大陸部との跨境地帯で、草の根文化交流を共同調査や共同出版で進めてきている。東南アジア側への展開と連携を当面の主な課題とする。

(3) パプア・ニューギニアへの稲作技術移転事業は、インドネシアから陸稲、湿地稲の技術を草の根レヴェルで移転して、そこで高まっている自前の米生産志向を支援しようとする。パプア・ニューギニア南・北高地州の農民、農業局から強い要望があり、沿岸低地地域では日本や台湾のODA事業がすでにあるが、インフラストラクチャの整っていないこの地域では、環境適応的な農民技術の移転がより有効と考えられる。

(4) フェアー・トレード支援事業は、ローカルな熱帯産物の不公正な集荷、販売に対して、フェアー・トレードの動きを高めようとするものである。当面、東チモールを優先的に進める。

(5) 「美しき湖国」事業は、理想の小宇宙滋賀の実現をめざして、市民、学生、生徒が協力して企画、実践活動を行う。滋賀県立大学、琵琶湖博物館を中心に住民集会、研究会を行ってきている。とりあえずは守山市を中心に行う。

〔3〕 上記プロジェクトに係る人的交流事業

(1) 海域教育研究所(NPOルンバガ・プラフ)支援事業は、インドネシアのスラヴェシ島を中心としてウオーレス海で活躍する伝統的帆船航海を実践し、島々の交易、交流の伝統を強めようとするもので、支援グループは伝統的帆船を建造し、航海の実施と活動計画を準備し、上記各事業参加者及び日本の青少年の参加も計画している。

〔4〕 上記プロジェクトに係るネットワーク形成と情報発信事業

(1) 平和環境もやいネットのウエブサイト形成事業は上記の国内、国外各グループを結ぶネットワークを作り、関心を同じくする他のグループとネットワーク形成を進め、発想の交流、実践の連携、論議の深化を推進する。FM局の開設も進める。

〔5〕 その他、本法人の目的を達成するに必要な事業

 これらの事業は、すべてこの法人の設立社員とその仲間が、これまで学術的活動の中で論議し合って来たことがらであり、相互の理解は深い。これから、各事業グループが一団となって法人を作り、国際的な地域の生活の場に立った、幅のある、自由な、しかし問題意識、目的意識において心を一つにした活動を進めたい。

平成15年6月1日                    
特定非営利活動法人平和環境もやいネット
設立代表者  髙谷 好一

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