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インドネシア植林と水田再生 ―熱帯林保全と泥炭湿地再生プロジェクト―

「安物団地へ放り込まれた」政府移民

スマトラのジャンビ州、海に近いランタウ・ラサウ村の朝は、幹線水路で水浴びをする人々で賑わっている。水路にかけられた橋は薪や野菜、板、竹を運ぶ人々で、混みあっている。宿、といっても公共事業省の寮だが、その向かいにちいさな市場がある。ぶらぶらとそこへ歩く。水路にポンポンエンジン船がもやってある。何を運ぶのかなと、市場の前に腰掛けてだべっている人々に話しかけた。

「ポンポンで何を運ぶの? 米かい、ココヤシかい?」人々はびっくりしたように私を見た。「米なんて取れないから、運びやしないよ」、中年男が答えた。「それじゃ、ココヤシ?」「ちがう、ココヤシも取れない」、みんなが声を合わせた。「それじゃ、何をしているんだい?みんな農業やってないの?農業移民で来たんだろ?」
「そうだよ、農業で生きようと来たんだがね、何も育たないんだから、どうやって農業で生きられる?政府移民で来て、農業で食ってるのは20パーセントいかないね」。さっきの中年男が言うと、ほかの人々が口々に反対した。「10パーセント以下だ」。私は始めの疑問を繰り返した、「それじゃどうやって食ってるの?百姓じゃないんだね?」ひとりの青年が皮肉そうに言った、「賃働きさ、ランタウ・ラサウは安い賃働きで食ってる者が、安物の団地に住む所さ。ポンポンは現場まで通勤する足さ、ちょうど町の人が乗合いバスで通勤するようにね」。みんなはそうだというように、諦めた笑い声でうなずいた。

スマトラやカリマンタンの海岸デルタにある政府開拓移民地では、どこも諦めの重い空気が閉ざしている。

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